ムシキング

「熟年男性の皆様こんにちは・・・」といったメールが来たテツです。わき目も振らず削除。速攻フルパワー削除。40年後に送って来い。


散髪に行きました。引っ越してから、気に入った店が見つからないのを理由にあちこちの美容院を渡り歩いているんですが、今回は街中にある美容院。店に入り、順番待ちして、席について、美容師がはさみを持って一言。


美「はじめの一歩で、誰が好き?


はぁ?ですよ。いらっしゃいませ、でも無くこんにちは、でも無く、第一声がはじめの一歩ですよ。ある意味ハートブレイクショットですよ。そりゃ俺も固まるっちゅうねん。ネジが外れたオッサンとの長い2時間が始まる。

気を取り直して雑誌を見ながら「こいつと同じ髪型にしてくれ」と注文をし、カラーリングのために液を塗りつけられます。オッサンは待ってましたとばかりにネジの外れた会話を繰り返します。


美「最近、に凝り始めましてね、今、箪笥の中でクワガタと亀とザリガニを飼ってるんですよ」

テツ「はあ」

美「ザリガニが結構かわいいヤツでね、あ、こいつがオーストラリア産でね、あのデカイハサミあるでしょ、あれってね、威嚇の時にしか使わないんですよ。餌食べる時はその奥にあるちっちゃい足でつかむんですよ、可愛いでしょアハハ」


すいません僕虫大嫌いなんですよ」というカウンターすらも聞かず、オッサンの会話は永遠に続きます。


美「こないだクワガタの幼虫を輸入しましてね、あ、最近はスマトラ産がトレンドなんですけどね、地震で大変になっちゃったじゃないですか、だから今だとスマトラはレアになると思うんですよ、クワガタの幼虫今30匹くらいいるんですけど、あ、欲しいって言ってもあげれませんよ?一匹ウン千円ですから」


俺はさっき虫が大っ嫌いと言ったばかりなのに何を聞いてたんだという心の突っ込みすら無視され延々と虫を語るオッサン。しかも何かしゃべる度に「こーんな」とか「これくらい」とか身振り手振りで表現しやがるんでちっとも散髪が進みません。早く帰らせて。

苦行を耐え抜き2時間経過。冒頭でお願いした「こいつと同じ髪型にしてくれ」という髪型とは似ても似つかぬ73ヘアが出来上がり、「虫の中ではゲンゴロウが最強」と言うどうでもいい知識を無条件に詰め込まれ放心状態にあるテツが本通りに立ち尽くしていました。金返せ。