プロジェクトX風・釣りバカ日誌

・その日、テツは、久々の釣りに出かけた。誘ってくれたのは、前の会社の友人のMさんとKさんだった。

・久々の海、穏やかな天気、テツは爆釣を予感した。「俺が、今日の夜の食卓を賑わしてやろう」そう、誓った。


(オープニング曲・地上の星


・Mさん家の集合時間は午前6時だった。テツが家を出る時間は午前4時半だった。朝が、辛かった。

・Kさんを拾ってMさんの家に向かう時点で、雨が降っていた。嫌な、予感だった。

・ところが、Mさん家について周防大島についた途端、雨がやんだ。「釣りの神様のおかげだ」全員で、叫んだ。

・ポイントに到着し、用意を開始した。テツは、釣り道具を全く持ってきていなかった。その割には、寒がりなテツは防寒具だけは完璧に揃えていた。「軟弱者め」Mさんが、言った。


・テツ以外の2人が釣りを開始した。テツは、釣り糸を絡めてもがいていた。「誰か、助けてくれ」そんなテツの願いは、届かなかった。テツが海に糸を垂らしたのは、その15分後だった。

・テツ以外の2人は、快調に魚を釣り上げていった。30センチオーバーのチヌをMさんが釣り上げた。「そのチヌ、僕にください」テツが言った。願いは、やっぱり届かなかった。

・2時間後、テツの浮きが初めて沈んだ。「来た!来たよ!マジ来たんだってば!」テツは、叫んだ。

・釣り上げてみると、10センチくらいのフグだった。皆に、馬鹿にされた。テツは、心を砕かれた。


(スタジオにてMさんにインタビュー・皆でテツを小バカにする)


・その後、テツの竿には全く当たりが来なかった。唯ひたすら、餌と竿を投げるだけだった。

・更に2時間後、餌もそろそろ底をつき始めた。テツは、あせり始めた。「大きな口を叩いておいて、坊主では、家に帰れない。何が何でも、魚を持って帰らねば」テツは、スーパーで魚を買って帰ることも、覚悟した。話では、大竹のユメタウンでチヌが安い、と聞いていた。

・その時、テツの竿が大きくしなった。「来た!来たよ!マジ来たんだってば!」テツは、叫んだ。竿のしなり具合は、先程とは比べ物にならなかった。テツの胸が、躍った。

・テツは、一生懸命リールを巻いた。皆の喜ぶ顔が、目に浮かんだ。

・竿の先についていたのは、20センチを勇に超える巨大なフグだった。

・Mさんがテツの肩を叩いた。「よくやったな、テツ」その顔は、半笑いだった。


(エンディング曲・ヘッドライト・テールライト


・その後、撤収した3人は、優しくテツを慰めた。「ユメタウンなら30オーバーが500円だから」その優しさが、痛かった。Mさんが言った。「海を汚しただけだったな」その言葉に、嘘偽りは無かった。