プロジェクトX風・釣りバカ日誌3

中秋の名月の7日、テツは、約1年ぶりに釣りに出かけた。誘ってくれたのは、前の会社の友人のMさんとKさんとHさんだった。

・狙うはタチウオ。夜の海に住む銀色に光る長い魚である。Hさんの「先々週、1匹だけ釣れた」という言葉に、不安になった。



(オープニング曲・地上の星



・集合場所は、テツの家だった。MさんがKさんを乗せてやって来た。予定通り「テツの車に荷物を乗せかえるで」と、叫んだ。いつもの事だ、と、テツは、諦めていた。

・目的地は江田島だった。音戸の瀬戸のグルグル橋に、相変わらず本気で目を回した。前回のネタの舞台となった島に、色々思い出し、少し涙した。

・ポイントに到着し、用意を開始した。まだ明るかったので、太刀魚用の仕掛けではなく、「初心者用」で名高い、差引きの仕掛けにした。「テツにお似合いじゃ」Mさんが、言った。

・釣り糸をたらした瞬間、当りがきた。「これは、爆釣だ」テツが、叫んだ。リールを巻くと、アジが2匹いっぺんに、釣れた。小さかった。「テツにお似合いじゃ」Mさんが、言った。

・その後、何度かアジと鯖を釣った。とりあえず、坊主は免れた。「しかし、今日のメインは、太刀魚だ。こんなの、おまけだ。釣った内に入らない」そう叫んだテツの口元は、緩んでいた。

・その時だった。何か、空から、近づいてくる音がする。そして。「ビシャッ!!」何かが、服に付いた。紫色の何かが、激しく服に付いた。言葉に、ならなかった。他の3人は、「ネタになるね」と、笑った。



(スタジオにてMさんにインタビュー・皆で汚れたテツを小バカにする)



・時間が過ぎ、暗くなった。太刀魚の仕掛けに変え、待つことにした。月が、とても明るかった。








・以外にも太刀魚の当りが一番早く来たのは、テツだった。浮きが海中に消え、太刀魚が餌を食べきるのを待つ。そこを引き上げる。無常にも、餌だけが取られていた。「まあ、そんなに甘くないよね」まだ結果を残していない、Kさんが言った。

・途端にテツの竿には当たりが来なくなった。待ち続けるしか、無かった。Hさんは快調に釣り上げたが、他の3人には、全くといって良いほど、当りが来ない。「最近、新しくイオンが出来たらしい」Kさんが言った。真剣に、考えた。

・当たりが無くなって4時間。皆寒さと疲れで意識が無くなりかけた頃、テツの浮きが沈んだ。「ラストチャンスだ。ここで逃がしたら、もう、釣れない」皆が見守る中、必死でリールを巻いた。大きく、竿が、しなった。海面に、銀色に光る魚が、現れた。タチウオだった。テツの口に、涎が光った。







(以前「証拠が無い」と誰かに言われたので)




(エンディング曲・ヘッドライト・テールライト



・その後、結局太刀魚は1匹だけだった。しかし、その他にも数を釣った。皆の喜ぶ顔が、目に浮かんだ。Kさん以外は結果を残し、意気揚々と引き上げた。相変わらず夜中3時の運転は、きつかった。Mさんは、爆睡だった。

・翌日、ハルに意気揚々と報告した。しかしハルパパが翌日、釣りに行った。太刀魚釣りだった。結果は、大爆釣だった。テツの太刀魚は、全く持ってハルパパの影に隠れた。



切なかった。